海外で子育てしているお母さん必見!日本語の「読み書き術」

ママ
違うでしょ!さっき言ったばっかりよっ!
子ども
・・・(もうイヤだよ…)

こんな痛い親子の会話…意外と身近にあったりして。。
親が日本語を教えないといけない状況にあると、嫌でも先生にならなければいけません。でも、やっぱり親子。
うまく「教える」・「教わる」という関係を作れないこともしばしばですよね。

特に「読み書き」を教える頃に、学習モードに入ったお母さんとその準備のない子どもとの気持ちの温度差で、スムーズな活動ができなくなることがあります。

「できるだけ楽しく日本語に取り組んでほしい!」というのは、どの親もみんな望むところです。
でもそれがなかなか難しい。

この記事では、幼児期に子どもに身につけてほしいことを踏まえながら、スムーズに文字活動に入っていくステップについて、お伝えしたいと思います。

幼児期のお母さんの役割

親が子どもにどんな環境を用意してあげるか・何をしてあげるかは、それぞれの家庭で様々に違うでしょう。
でも、どの子にも共通して身につけてもらいたいものがあります。
それは「根拠のない自信」「自己肯定感」です。

  • 自分のやりたいことに一生懸命になれる没頭力
  • 諦めずにやり抜く根気強さ
  • 新しいことにも挑戦する勇気

これらのような、何をするにも根本に持っていてほしい心の強さは「自分を信じる気持ちの強さ」で決まります。

そして、その「自分を信じる気持ち」に大きく影響するのが、幼児期の育ちの中で形成される「根拠のない自信」と「自己肯定感」なのです。

その自信を育てるために、何か良いことをしたとか、うまくできたとか、そんな「根拠」は必要ありません。必要なのは「愛されている」という実感です。何があっても揺るぎなく受け入れられている安心感が、自分を信じる力となり、外に一歩踏み出す勇気となります。

そして、ありのままの自分を認めてもらって育った子どもは自己肯定感を持てるようになります。自己肯定感を持てない子どもは、自分に自信が持てず、不安に陥りやすく、行動全てにその影響が出てきます。
「どうせ、僕なんて…」という卑下する気持ちや、「〇〇ちゃんは上手くできていいなあ」と初めから無理だと諦めてしまう心の奥に、この自己肯定感の低さが隠れています。このような心のあり方は、親の接し方に大いに関係があります。
結果だけを求めていたり、他の子どもと比較して非難ばかりしていては、自信もやる気もなくなるのは当然のことですよね。

ママ
「これくらいできなくてどうするの?日本の子たちはとっくにできるようになっているのよ」
「〇〇ちゃんはもうこのドリル、全部覚えちゃったって言ってたわよ」

このような言い方がNGなのはそういう理由です。

今、目の前の子どものやる気を削ぐだけではなく、将来的に子どもの心の持ち方に影響を及ぼす大問題なのです。

自分に自信を持つには、自信を持たせる言葉がけが必要です。難しいことも挑戦してみようと思うには、小さな成功体験の積み重ねが必要です。そして、うまくいっても、いかなくても、受け止めてくれる安心感が必要です。

特に文字への取り組みは、それまでのような遊びの延長の学びではなく、学習らしい取り組みになることも多く、ついお母さんの要求も高くなりがちです。

ついカッとなって、感情が爆発してしまうこともあるかもしれませんが、幼児期は、心の強さの土台作りの時期だということを忘れずに、日々の声がけ・働きかけを意識してみてくださいね。

読み書きへの取り組み方

「読み書き」をマスターする。
習得と学習継続が難しく、将来の子どもの日本語レベルにも影響するところです。

言葉を「話すこと」と、「書くこと」の間には、大きな差があります。
なぜなら、「話して相手に伝える」時に使っているのは、言葉だけではないからです。
身振り手振りや表情、声のトーンも使えます。
聞く方も、聞きながら推測することができますし、自分の推論が正しいか、途中で確かめることもできます。
文章として成り立っていなくても、文法のルールに則っていなくても理解できてしまうことも多々あります。

しかし、「書いて相手に伝える」となると、グッとハードルが上がります。
書いたものを読んで、理解してもらわなければいけないからです。
そして書かれたものを読む場合にも、それを理解できるだけの言葉の知識がいりますよね。

「話し言葉」と「書き言葉」は、言語習得の上で、レベルが全然違うのです。

「読み書き」をマスターするということは、文法も含めた学習言語としての日本語を身につけることにつながり、思考ツールとして深いレベルで日本語を使うためのステップにもなるということです。

それでは、文字活動のために心得ておきたいこと文字に触れていく工程について、順に見ていきましょう。

文字習得のための親の心得

文字は、これから長〜〜く使っていく大切なものです。
いやでも日本語を書く機会が生まれる日本に住んでいるならともかく、海外に住んでいるなら、なおさら、はじめの一歩が肝心です。
無理やりやらせて文字嫌いにさせてしまっては、その後のリカバリーの機会が少ない分、大変なことになります。

そのためにはまず、文字に興味を持たせてあげることがとても大切です。

反対に、絶対にしてはいけないことは、興味もないのに、無理やりプリントやドリルをやらせることです。

以前勤めていた日本の幼稚園の年中クラスでこんなことがありました。
文字の習得を急ぐあまりに、お母さんがお家でドリルをやらせ過ぎてしまったんです。そのせいで、子どもが書くことにものすごい拒否反応を示すようになってしまいました。
プリントの前に座っても、渋い顔をしながらため息をついたり、鉛筆で消しゴムを転がすばかりで一向に書こうとしません。明るく補助をしても、乗ってくる気配もありません。
できないのではなく、やりたくないのです。

そうなると、イヤっ!という気持ちを取り除くのに、時間がかかってしまい、現地の言葉を学びながら日本語まで学ぶなんて、とても追いつかなくなってしまいます。

そこで、子どもを文字嫌いにさせないための大切なチェックポイント2つあります。

  1. 興味を持っているか?
  2. 楽しんで取り組んでいるか?

子どもが自分から「やりたい!」って言うような、それこそ遊ぶような感覚で日本語を学びたくなるように働きかけてあげましょう。

「お母さんが熱くなりすぎて、空回り」
「子どもが思うように取り組まなくてイライラして怒る
というのがダメなのは、子どもの育ち云々の前に、子どもが日本語学習を楽しめず、その結果として学習に取り組まなくなってしまうという悪循環に陥ってしまうためなのです。

文字は「書く」より先に「読む」ことから

「よし、うちの子絵本も好きだし、おしゃべりも上手だし、そろそろ平仮名を教えてもいいんじゃない?」 と、いきなりドリルを開いて、「あ」「い」「う」を書かせ始める。

待ってください。急ぎ過ぎです。
初めが肝心ですよ。慌てずゆっくりやっていきましょう。

書き始める前の準備が必要です。

楽しみながら文字を「読む」ための具体的な4つの活動例

「書く」前に、まずは「読む」ことから取り組みましょう。

「物の名前や話す言葉は文字で書き表せる」ということを、子どもが知らなければいけません。
「絵本を読んでいるから、そんなこと知らないわけがない」と思ってしまいがちですが、子どもは耳にする音書かれた文字を一致させて認識しているわけではありません。

小さい子どもが絵本を読んでくれることがありますが、文字を読んでいるというより、聞き慣れた音の記憶を再生している場合の方が多いのです。

ここでは、1音1文字の概念を、子どもが理解していくのに有効な具体例を4つほど挙げてみます。

[活動例1]

身近で、子どもが興味を持つものを文字に表したり、読んだりしてみましょう。
例えば、

  • 自分の名前やお母さんの名前
  • 飼っているペットの名前
  • 好きな動物や乗り物の名前 

などを、お母さんが文字に表してあげます。
紙に鉛筆で「は・な・こ」と書いてもいいですし、1文字ずつ平仮名が書いてあるカードを並べたり、判子で押したり、表し方は自由です。

書いたら「ハナコ」と声に出しながら1文字ごとに手を叩いてあげると、音節を意識できます
3つの音節だから文字も3つあると、よりはっきり理解できます。
拗音(きゃ・きゅ・きょなど)など1文字1音の例外もありますが、「小文字を使うので、2文字でも1音」と理解しやすく、書き表して文字を見ながら説明すれば納得できます。

[活動例2]

しりとりや類推ゲームで出た言葉を、お母さんが紙に書き取ってあげましょう。
「同じ音の言葉は同じ文字で始まる」ことを実際に見ると、文字の規則性にも気づくことができます。

[活動例3]

お風呂タイムを使って、スポンジのくり抜き文字を使った言葉作りも楽しい遊びです。
お風呂は脳がリラックスしているので、色々思いついたりするのにはちょうど良い環境ですよ。

この商品は、楽天やアマゾンでも取り扱いがありますが、「セリア」という100均のお店にも同じような商品が売っています。
軽いので、日本の家族にも送ってもらいやすいですね^^
でも、カットしたウレタンにマジックで文字を書いて自作してしまうのが、一番早くて簡単かもしれません。

[活動例4]

「書かれたものを読むことを取り入れた遊び」をするのも、楽しく文字に触れられる方法です。
例えば、「くじ引き遊び」は子どもが積極的に文字を読みたがる遊びです。
くじは「紙に書いたもの」を引いても、「あみだくじ」でもなんでも構いません。
今日のおやつや晩御飯、お手伝いや罰ゲームなど、いろんなお題でくじ引き遊びを楽しみましょう。

お店やさんごっこのメニュー表など、読むこと自体が遊びになる方法を考えてみてください。

いかがだったでしょうか。
部屋にさりげなく50音表を貼ったり、カルタをやるなど、文字を実際に見る機会を増やしてみてください。

また、初めは無理に読ませないこともポイントです。お母さんが読み上げてあげるだけでも十分です。
何度も繰り返しているうちに、文字の形と音とが一致していきます。

これは「あ」よ、これは「い」よ、と教え込むのではなく、生活の中で自然に、遊びを通して楽しく文字を取り入れていきましょう。

筆圧を上げるために鉛筆を活用しよう

文字を書くためには筆圧も必要です。文字を書く練習に入る前に、まずは鉛筆で書く経験を十分にさせてあげてください。
絵を描くのが好きな子なら、すでに筆圧もあるかもしれませんが、鉛筆を思うようにコントロールすることは、意外と難しいものです。
迷路遊びなどを通して、鉛筆をコントロールすること・筆圧を上げること、を練習しましょう。
これまで絵を描くのにクレヨンを使っていたなら、それを鉛筆に持ち替えて描かせてみて、鉛筆の感覚に慣れさせてもいいでしょう。

文字を「書く」ことへのアプローチの仕方

さて、文字に興味を持たせて、読めるようになってきたし、筆圧も上がってきたし、今こそドリル!
いえいえ、その前によく吟味してください。
「そのドリル、子どもが楽しく取り組めそうですか?」

ドリルに楽しさを感じる子ばかりではないのが現実であり、自分の子どもに合っていなければ、それは間違ったやり方です。

とはいえ、確かにドリルは体系的に学習できるので、取りこぼしなくすべての文字に触れたり、文字が正しく習得できているかをチェックするためには有効です。

もし子どもがドリルを好きでないのでしたら、ドリルだけで文字習得を目指すのではなく、他の活動と組み合わせ、子どもが文字を書く活動を楽しむ工夫をする必要があります。

それでは、どのような工夫ができるか、取り組み例を3つ挙げてみましょう。

楽しみながら文字を「書く」ための3つの工夫例

工夫その1:文字パズル

  1. 同じ大きさに切った紙に、物の名前を1文字ずつ書いて渡します。
    例えば、「す・い・か」なら、3文字、3枚の紙にそれぞれの文字を書き、順序をバラバラにして子どもに渡します。
  2. 紙を受け取った子どもはその文字を並び替えて、意味の通る言葉を作ります。
  3. できた文字をお手本にして見ながら、紙に書き取っていきます。

工夫その2:文字のお花摘み

  1. クリップをつけた小さな紙の花に1文字ずつひらがなを書いて、床にたくさん並べます。
  2. 魚釣りの要領で、糸の先に磁石をつけた棒で花を釣ります。
  3. 釣った花に書いてある文字から始まる言葉を考えます。
  4. できた言葉をお母さんが書き取り、子どもはそれをお手本にして紙に書きます。

花ではなく、タコ型宇宙人でも、魚でも虫でも、好きな形で構いません。実際のところ、ただの丸や四角でも釣るのが楽しいので、子どもは喜んでやります。でも、「お花摘み」や「魚取り」など活動に意味づけができるので、子どものモチベーションが上がります。

工夫その3:文字探偵

  1. 紙に言葉を一文字だけ抜いて書きます(左側の行)。
  2. それを子どもに渡して、どんな文字を入れたら言葉が完成するか考えさせます。
  3. 正解が出たら、お母さんが空欄に言葉を書き入れ、子どもはそれをお手本にして紙に書きます。
  4. ポイント
    左側の問題だけ渡して、正解を書き入れたのち、国語ノートなどに貼って、子どもがその横に文字を書いてもいいですし、問題をノートに直接書いても構いません。どちらにしても、マスのある紙に書く方が、字形が整えやすいのでオススメです。
    ノートに書く際は、初めにずらりと問題を書いておかないで、1問できたら、次の1問を書いてあげるようにして下さい。
    次を楽しみにできますし、その時の子どもの、ちょうどいい分量で止めることができるからです。

文字が練習できる、リーダー線入り書き取りマスはここからダウンロードできます。

いかがだったでしょうか?

取り組み自体にゲーム性を取り入れると楽しくなりますよ
色々な活動を自由に発想してみてくださいね。

楽しく遊んだ後なら、ドリルにも取り組みやすくなっているかもしれません。
できるようになったことは、楽しくなるものです。

文字を「書く」時のポイント

文字は、点線を書いてあげて、「なぞり書き」にしてあげることもできますが、できるだけ手本を見ながら書く写し書きに挑戦させてください。
丁寧に、お手本をよく見て字形を整えて書かせましょう。

ママ
「点が同じ場所に書けたね」
「横の線はどこから始まってるかな?」

声がけは、「きれいにかけたね」「もっとよく見て」のような抽象的なものではなく、「どこに注目して書いたらいいか」「どんなところが良かったか」を具体的に伝えてあげましょう。

「写し書き」に慣れてきたら、徐々に「空書き」に移行してください。
50音表を隣に置いておき、「わからなくなったら調べて書く」というルールにしてもいいですね。

文字を書くのに慣れてきたら、文章を書いてみましょう

文章を書くのは、単語のみを書くのと違い、助詞の使い方文章の組み立て方といった文法にも触れられる機会になります。

とはいえ、「わ」と「は」「お」と「を」の書き分けなどは、使う時に知らせてあげたいですが、細かな文法の話をする必要はありません。

子どもに書きたい内容を話させて、お母さんが書き留めてあげます。意味が通じない場合には、お母さんが「それはこういうこと?」と確認しながら文章にまとめてあげます。
そうすると、ああ、そうやって文章にすればいいんだということが子どもにもわかってきます。

お母さんがまとめた文章が、ちょうどお手本になりますね。

また、「書きたい気持ち」を大切にしてあげてください。
文字を書く目的を作ってあげると、気持ちも乗りやすくなります。

取り組み例としては、次のようなことができます。

  • 友だちや日本のおじいちゃんおばあちゃんにお手紙を書く
    子どもが話す内容をお母さんが書き取ってあげたら、それをお手本にして見ながら書かせてください。
    自分で書き進められる子は、わからない文字がある時だけ、お母さんがその文字を書いて教えてあげればいいですね。
    その子の文字の習得レベルに合わせて、臨機応変に取り組んでください。

    手紙の出し方や郵便局の仕事など、学びの多い活動です。
  • 自分でお話を考えて、絵本を作る
    複数ページある本でなく、1枚絵のお話でも構いません。
    初めのうちは、絵を先に描いた方が、文章を思いつきやすいかもしれません。すでにある絵を頼りにして、言葉を考えることができるからです。
    手紙と同様、子どもの文字習得レベルに合わせて取り組んでください。

    最後に表紙をつけて、本の形に装丁してあげると喜びますよ。
    できた本は、読み聞かせの本に加えたり、子どもに読んでもらってもいいですね。


文字は用途があって使うものです。
意欲が湧くような書く理由やテーマを見つけていきましょう。

また、書き始めの子どもにとって、書く作業はなかなか疲れるものです。
負担をかけすぎず、欲張らず、少し頑張って取り組んだら、達成できるレベルを目指してください。

「子どもと一緒に日本語を使った楽しい時間になる」くらいがちょうどいいですよ。

ノートに書き溜めた言葉や、手紙・絵本が出来あがり、頑張って取り組んだ成果が見えると、達成感や満足感も味わえ、自信と意欲につながります。

まとめ

過去記事「日本語を伸ばす方法」の中でもお話ししていますが、日本語の取り組みは、お母さんの働きかけが非常に重要です。

海外生活で幼児期の子どもの日本語を伸ばす2つの具体的な方法

2019年12月13日

日本で手に入る教材は、日本に住んでいる日本語環境の整った子どもたちに向けて作られているため、そのまま海外暮らしの子どもにも使って良いかどうかは、お母さんがよく検討する必要があります。

ドリルなどの教材は1つのツールの選択肢でしかありません。目的ではなく手段です。
目的は、子どもがモチベーションを失わず、文字を習得することです。
つまり目的が達成されるならば、どのような手段でも構わないのです。

文字が習得できれば、その後の日本語の活用に幅が広がります。

一人一人の子どもの性格・興味・必要に合わせた適切な支援を見定め、子どももお母さんも笑顔で楽しく過ごせるような工夫をしていきたいですね。

少しずつの積み重ねが実を結びます。
焦らず、穏やかに我が子の言葉の成長を促していきましょう。

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