「読み聞かせ」がいいのはわかるけど、どんな本を読んだらいいの?
でも、日本語を育てるための「読み聞かせ」を考えるなら、そのための本の選び方を知る必要があります。
この記事では、それぞれのジャンルの本には、言語育成にどのような効果・メリットがあるかを知り、「子どもの日本語を育てる」という目的を持った読み聞かせをする方法を提案します。
さらにはジャンルごとのオススメの本や、各家庭に合わせた新しいジャンルの本の選び方についてもお伝えしています。
国内外を問わず、お子さんの日本語を育てたいと考えていらっしゃる方はぜひ参考にしてみてください。
コンテンツ
日本語を育てるために取り入れたい本について
「絵本の読み聞かせ」は、お家でできる日本語教育の中でも、最も取り入れやすく、継続しやすく、かつ効果もある活動です。
普段の生活では触れづらい言葉・使わない表現を自然に学ぶことができるのは大きなメリットです。
でも、なんの意識もしないで選本していては、その効果も半減してしまいます。
特に海外で子育てをしているお母さんは、この選本への意識がなおさら重要になります。
なぜなら、家庭で使われる日本語が、子どもの日本語を作るからです。
日本語に触れられる時間が限られている子どもにとって、お母さんが子どもに触れさせる言語の幅を広げていかなければ、子どもの言語力も伸びていかないのです。
逆に、「どのような言葉に触れさせていくか」を意識して選んだ本を、読み聞かせに取り入れられれば、より幅広く、深い日本語力を養うことができるようになります。
そのためには、どのようなジャンルがあるのか把握し、それぞれのジャンルの本が、どのような日本語を伸ばすための手助けをしてくれるかを知る必要がありますね。
本のジャンルは下の図のように大きく分けることができます。
また、小さい子どもの本は、言葉遊びの中に短いストーリーが織り込まれているなど、複数のジャンルの要素を持つ作品もあります。
そして、「本の読み聞かせで養われる能力」はジャンルごとに異なるのです!
それではこの分類に沿って、ジャンルごとにどのようなことが学べるのか見ていきましょう。
各ジャンルにおける本の役割の違いとオススメの本
本のジャンルは以下の6つに分けられることがわかりました。
- 物語
- 科学的な本
- 社会的な本
- 伝記
- 日本語を楽しむ本
- 図鑑
ジャンルが違うそれぞれの本は、会話・情景描写・説明といった書かれる内容による文体や、そこから得られる情報・知識が変化するだけではありません。
本によって考えることが変わる、つまりイメージ力・推理力・知識統合力・比較分析力など使われる思考力も変わるということです。
そのように考えると、本選びにも熱がこもりますね!
それでは、6つのジャンルの特徴と、それぞれのオススメの本を、順に見ていきましょう。
「物語本」の特徴と得られること
物語は多くの子どもが1番慣れ親しむジャンルではないでしょうか。
我が家でも「がらがらどん」などの娘のお気に入りのお話は、毎晩の読み聞かせだけじゃなく、日中も外出先でも何度も繰り返し読まされていました。
物語本はバラエティ豊富で、それぞれ違った世界観が子どもの豊かな感性を育てます。また幅広い表現に触れるためにも、1人の作品に絞らず、色々な作者の本を読んであげてください。
それでは、物語本から得られるものを見てみましょう。
- イメージ力・想像力を養う
文章に書かれたことだけでなく、そこから発展させて、自分だったらこう思うといった自分の思いや考えもイメージします。 - 語彙・表現力を養う
色々な作者の本を読むことで、様々な言い回し・表現方法に触れることができます。
普段使わない語彙に自然に触れられます。 - 読解力を養う
ストーリーを大筋で理解することができるようになります。
また、登場人物の思いを読み取ったり、「内側=人の内面・心」と「外側=外に現れる行動」の違いや、自分とは違う価値観を持った人を理解する機会になります。 - 先を見通す力を養う
物語の流れや登場人物の性格などから、どのように話が展開していくか予想し、話の顛末を期待しながら読み進める中で妥当な先行きを考える力を養います。 - 共感力などの心を養う
感情を動かしながら物語の世界を楽しみます。登場人物を通して、自分も追体験したり、同情・嫌悪などの喜怒哀楽・倫理観・道徳観といった情操を養います。
物語本ではこんな本がオススメです。
「しょうぼうじどうしゃ じぷた」
コンプレックスを持った小さな消防車が、活躍できるチャンスを生かして自分に自信をつける話。「乗り物」「恐竜」「昆虫」など、子どもの興味のある分野の絵本を選ぶと、より興味を持ちやすくなります。物語で本を読むことに慣れると、科学的な本にも移行しやすくなる効果があります。
「科学的な本」の特徴と得られること
身の回りの自然・科学現象に興味を持ち、なぜ?どうして?という知りたい欲求を育てます。知的好奇心を持つことは、勉強の楽しさへと繋がっていきます。
お話として構成されているので、流れに乗って、自然に知識に触れることができます。
また、事実が客観的に書かれた文体は、知識の習得を目的とした読書や、文章から情報を読み取る練習にもなります。
科学的な本からは次のようなことが得られます。
- 客観的視点を養う
ものごとを全体的に捉えたり、「それってどういうこと?」と引いてみることによって、公正な見方・冷静な判断をする目を養います。 - 論理的思考を育てる
筋道だった話し方・わかりやすい伝え方を通して学びます。
また、原因と結果という因果関係を考える練習にもなり、合理的に予測することを身につけられます。 - 知識を得る
不思議に思うことを解明したり、新しく発見する驚きや楽しさを通して、知る喜びを味わいます。 - 学習言語を学ぶ
アカデミックな言葉は普段の生活の会話で触れていくのはなかなか難しいかもしれませんが、本であれば簡単に触れられます。どれだけ学習言語を獲得していけるかが、子どもの将来の日本語力の要になります。
就学前からアカデミックな事柄にも触れておけば、修学後に学問として取り組むための土台が作っておけます。
自然科学の本ではこんな本がオススメです。
「地面の下のいきもの」
地面の下の生き物の生活がとてもわかりやすく、イラストで表現されています。絵を見ながらいろいろな発見できるのが楽しい本です。
見えるものが文章で表現されているので、どのように言葉で説明できるのかを学べます。
「社会的な本」の特徴と得られること
子どもは公共の場所、例えば公園や交通機関などでの経験を通して、社会の一員としての意識が芽生えるようになってきます。「でんしゃにのろう」のような社会的な本はその意識を育み、適切に導くために役に立ちます。
また「自分の住む世界にどのようなことが起こっているのか」「どんな見方ができるのか」ということを考える機会は、その子の価値観を作っていく大切な過程になります。
風土や歴史などに興味を持ったり、外の世界へと視野を広げるきっかけにもなります。
社会的な本からは次のようなことを知ることができます。
- 歴史を知る
今と昔を比較し、変化を考えます。
過去という時間の捉え方を知ります。 - 国・地理を知る
自分の国・地域の内外に興味を持ち、違いや共通点、特色を考えます。
村・町・地方・国・地球など、括り方・捉え方で見えてくるものが変わることを知ります。 - 民族・風土・文化を知る
多様な文化・風習に触れ、それぞれの良さや面白さを学びます。また自分の生活が当たり前でないことを知り、違う文化の人を理解したり受け入れる心を育てます。 - 地域社会を知る
自分の身の回りの社会の仕組みを知ります。
例)水道水の仕組み・ゴミの分別・公園・高速道路・学校など - 仕事を知る
様々な職業とその仕事内容について考えます。
自分はどんな仕事がしてみたいかを考えるきっかけにもなります。
社会的な本ではこんな本がオススメです。
「世界あちこち ゆかいな家めぐり」
世界の色々な面白い家を見ることができます。家が立っている情景の写真と家の造りがわかるイラストで構成されていて、その家や人々の暮らしぶりがとてもわかりやすく表現されています。「何がどうなっている」「〜だから〜だ」、といったわかりやすく伝わりやすい説明の仕方が学べます。
「伝記」の特徴と得られること
伝記では、実存した人の生き方を知ることで、「人間」としての生き方の多様性を見ることができます。
伝記になるような人物は、総じて「頑張り屋さん」で、粘り強くやり抜く力を持っていますが、初めからそういう人物として生まれて来た人ばかりではありません。
挫折や失敗を通して自分の生き方に気づいたり、他人の働きかけが変化のきっかけになる場合もあります。
どのように人生を作り上げて来たかを、生涯を通して見られるのが面白いところです。
また、偉人の生きた時代を現代から見ることで、その時代の大変さや生活・価値観の違いなどを知ることもできます。
伝記を読むことは、「人としての生き方」を考えるきっかけになります。
- 先人がどのように困難を乗り越えて来たかを知る
困難な状況への対処法を考えることができます。 - 未来を思い描くきっかけになる
「大きくなったら‥」という自分自身の未来を考えたり、今の恵まれた自分の状況のありがたさを知るきっかけにもなります。 - 規範となるロールモデルになる
「今」だけじゃなく、「人生」という長いスパンを考えるきっかけになります。 - 偉人の名言を聞くことができる
偉人の言葉には強いメッセージと生きる知恵が入っています。ポジティブな言葉は励みになります。
伝記ではこんな本がオススメです。
「伝記ものがたり101話」
1人につき2〜3話が収録されており、全101話になっています。1話あたり5分程度で読めますので、1度にちょうどいい分量で、読み聞かせてあげられます。
様々なエピソードの中から、子どもが特に興味を持った偉人については、「エジソン」「野口英世」など個人で1冊になっている詳しい伝記の本にも挑戦してみてください。
「日本語を楽しむ本」の特徴と得られること
子どもは同じフレーズや話のパターンが繰り返されるような言葉遊びが大好きです。
言葉遊びの本は、リズムや遊び方に規則性を持たせて作られていることが多く、それが楽しくて、繰り返し聞きたがったり、自分でも口に出して言ってみたくなります。
日本語を楽しむ本は日本語という言語そのものを知るために役立ちます。
- 日本語の音節を楽しみながら習得する
口に出して言ってみるのが楽しいので、遊びながら滑舌よく話すことを学びます。 - ダジャレなどの言葉遊びを通して、音と意味との関係に親しむ
「いるかいないか」のように2通りに意味が通る言葉や文章・「かるいいるか」のような回文・「箸と端」などの同音異句といった言葉の面白さを学びます。 - 言葉の規則性を知る
パターン化された短いフレーズを繰り返し聞いたり話したりすることで、主語・述語や助詞の使い方、動詞の活用など、文章の構成や言葉の使い方を学ぶことができます。 - 韻を踏むなど、日本語のリズムの面白さを味わう
日本語に触れることを楽しみながら、言葉の感覚を磨きます
日本語を楽しむ本からは2冊を紹介します。
「あっちゃんあがつく」
絵がどれもとても美味しそうで楽しそうなので、子どもの食いつきがとても良い本です。「あっちゃん『あ』がつく、アイスクリーム」といった短いフレーズが繰り返され、食べ物の名前と共に、歌うように文字の音を覚えていきます。
「ことばのこばこ」
言葉の概念がわかるようになってくる頃に、楽しい本です。文字の音と意味とを使った言葉遊びがふんだんに入っています。
「図鑑」の特徴と得られること
図鑑は使い方によって様々に学びが得られる本です。重たくて海外で揃えるのはとても大変ですが、苦労のしがいはあります!
我が家も、娘が生まれてから8年越しで毎年2・3冊ずつ運んでいます^^
読んだり見たりするだけでなく、書かれた内容について話し合うことに主眼が置けるのも、図鑑の良いところですね。
知識欲を引き出し、新しい気づき・発見する楽しさ・知る喜びが味わえます。
図鑑からは次のようなことが得られます。
- 概念の区分の仕方(カテゴライズ)を学ぶ
1つの物事を具体化したり、抽象化したり、立場を変えるなどして、幅広い視点を持つことができます。
例えば、
・カエルはハエを食べるが、ヘビには食べられる関係。
・プラスチックは生活に便利なものだけど、海の生態系には危険をもたらしているもの。
・シャム猫<ネコ<ネコ科の動物<哺乳類<動物<生き物 - 自分自身の知識のネットワークを作る
既知のことに新しい情報を加えていく「縦への知識の深まり」と、違う事柄に共通の概念を見つけてつなげていく「横への知識の広がり」によって、自分の中に広大な知識のネットワークを作っていきます。
- 知的好奇心を養う
好奇心は行動するための原動力になります。行動力は目標を達成するために必ず必要となる力です。 - わからないことを調べるという勉強の癖を作ることができる
- 「自分は知っている」ということが、自信になる
- 後の学習を学びやすくする
すでにその分野の面白さを知っていることは、学問として学ぶ時に学習への抵抗を下げてくれます。
図鑑ではこんな本がオススメです。
「はっけん どうぶつずかん」
初めての図鑑にぴったりです。イラストページは仕掛本になっているので、楽しく図鑑と関わることができ、本に親しみながら興味を深めます。仕掛けをめくることで「何がどうなる」という動物の動きがわかりやすく、その生態をよく知ることができます。
「MOVE 動く図鑑」シリーズ
NHKのスペシャル映像を使った付録のDVDのクオリティも高く、書物として、映像として、2度楽しい図鑑です。
実際に動物が動く様子が見られるので、より興味が持ちやすくなります。
図鑑も、ただ動物の種類を並べるだけでなく、臨場感のあるイラストで動物の生態を紹介しているので、ワクワクしながら見ることができます。
家に足りないジャンルの本の選び方
ジャンルごとに得られる効果を整理できましたが、お家の本棚の足りないジャンルの本をただ増やせば良いというわけではありません。
子どもが興味を持たないような本を本棚に加えたとしても、自分で読まないのはもちろんのこと、お母さんに読み聞かせられても面白くないので、読み聞かせの時間が苦痛になってしまうのです。
まずは、本棚を見直して、どんな本があるか・子どもがどんな本が好きかを確認してみましょう。
車と電車が好きだから、飛行機や船にも興味を持つかな?自動車工場はどうだろう?
そういえば幼稚園で野菜を育ててるけど、家で植物の本は読んだことないなあ
実際に本を見ながら考えてみると、子どもの普段の状況・興味のあること・よく手に取る本とそうでない本など気がつくことがいろいろあるでしょう。
そして、子どもの好みや普段の遊びを踏まえながら、足したい本を考えます。
足りないジャンルの本の中でも最初に選びたいのは、子どもが興味を持ちそうな分野の本からです。ですので、本棚に足りないジャンル、かつ、子どもが興味を持ちそうな本からリストアップしていきます。
例えば、図鑑を購入する時も、子どもが興味を持っているのが、「動物」なのか、「宇宙」なのか、「虫」なのかで選ぶ順番が変わるということです。
そして、それに関連する他ジャンルの本、さらに興味を持ったら世界が広がる本、とリストを広げていってください。
新しいジャンルの本を読み聞かせに取り入れる方法
せっかく色々なジャンルの本を揃えても、子どもに読んであげなければ、意味がありませんよね。
とはいえ、新しい本に自分から興味を示していない時に選ばせても、いつもと同じ本を持って来てしまうでしょう。
かといって、「今日はこれを読みましょう」とお母さんが決めてしまうと、乗ってこないかもしれません。
子どもに興味を持たせながら、お母さんが読み聞かせたい本を読むポイントは、子どもに選択権をあげることです。
いろいろ取り混ぜて「今日はスペシャルな本を読もう。どれがいい?」と、子どもに3〜4冊の中から選ばせるのです。
「自分で選んだ!」という満足感が持てるので、素直に聞いてくれる確率大ですよ。
そのうえで時間に余裕があれば、最後の締めくくりに、「いつもの本」も読んであげれば、さらに楽しい気持ちで終えられます。
また、子どもに本に興味を持たせるためには、環境設定も大切です。
「新しい本に興味を持たせる環境づくり」については、以下の記事をご参考ください。
まとめ
本を読むことは、いろいろな世界とつながることができる素晴らしい経験です。
言葉は触れれば触れるほど、使えば使うほど伸びていきます。そこに疑問を持つこと・知りたいと思う欲求が加われば、その伸びはさらに加速します。
子どもの興味に合わせた様々なジャンルの本を有効に使い、読み聞かせを楽しい習慣にして、子どもの日本語をどんどん伸ばしてあげましょう。
あかねさんとってもためになる記事でした!!この内容、情報量ともに素晴らしい!!
感動すると同時に、プラハ文庫の本は借りっぱなしだし新しいのを定期的に借りていない自分を反省・・・
プラハ文庫なんて贅沢なものが身近にあるのに勿体ないよねー、心新たにスタートしたいわ!
読んでくれてありがとう!
私もこの記事を書いて、改めてプラハ子ども文庫の意義を再確認したわ〜!
使えるものはどんどん使ってね!お越しをお待ちしています。