イライラするし怒りっぽい。イヤな言い方ばかり繰り返してしまう日常。そんな怒ってばかりの自分も嫌いで、自分自身に腹が立ってしまう。
その一方で、どうしようもなく悲しくなって涙が出たり、無力感に襲われることもしばしば。。。
子育てにとって「何をするか」より重要なのは「お母さんがどんな状態で子どもと接するか」です。でも「嫌な自分を止められない!」と感じるほど、心が不安定な状態に陥ってしまう時はありませんか?
- 心穏やかに笑顔で接したいけどできない
- 些細なことにイライラして怒ってしまう
- ヒステリックに声を荒げてしまう
そんな時の解決の手がかりとして、ぜひ読んでほしい本があります。
「脳を鍛えるには運動しかない」ジョン・J.レイティー/エリック・ヘイガーマン
この本では全編を通して、いかに運動が脳機能に影響を与え、生活における困難な状況を改善し得るかについて科学的に解説しています。
10章立ての分厚い本ですが、この記事では特にお母さんにとっての重要課題、ホルモンの変化による感情の揺れや体の不調の改善策について書かれた第8章にフォーカスして、本の内容とその活用についてお伝えしたいと思います。
コンテンツ
女性のホルモンバランスが崩れる3つの時期
成人してからのホルモンレベルがほぼ一定している男性に比べて、女性は規則正しく変動し続けています。そして、子育て時期や年齢によってもホルモン量は変動します。
女性の感情の揺れや体調不良の原因は色々とあるでしょうが、このホルモンの影響によって起こる不調は、誰にでも起こり得る問題で見逃せません。
このメカニズムを知って、改善に役立てられれば生活の質を向上できそうですよね。
ホルモン変動時期は次の3つです。
- 毎月の月経
- 妊娠・出産・産後
- 更年期
要するに、女性は生理が始まる12歳前後から、閉経後5年くらいまでの40〜45年という長い期間、ホルモンの影響を受け続けてしまうというわけなのです。
「ホルモンバランスが崩れる」「女性ホルモンの分泌が減る」などよく耳にするフレーズですが、実際にはホルモンはどのような影響を体や心に与えているのでしょうか。
それぞれの時期のホルモンの働きついて1つずつ見てみましょう。
PMS−月経によるホルモン変化によって起こる諸症状と運動との関係性
「PMS」、日本では「月経前症候群」と呼ばれています。月経が始まる前に心や体に何らかの不快な症状が起こることで、著者によると、実に75%の女性が症状を感じているそうです。
下腹の張りや痛みなどの軽い症状は一般的によく聞きますので、そのような軽い症状も合わせると、75%という大きな数字にはなるのかもしれないですね。でも、日常生活に支障をきたすほど症状が重い女性も14%もいると言います。
PMSの症状の出方は人によって様々で、疲労感・苛立ち・不安・落ち着きのなさ・攻撃性が出てしまう人。
他にも甘いものが欲しくなったり、集中しにくくなったり、寝付きが悪くなったりすることもあります。
体の症状としては、手足のむくみや皮膚の痒み、腹部の張りや便秘、乳房が痛むなど本当に様々に渡り、およそ150くらいの症状があるといいます。
どんな症状であれ、それが生活に悪影響を及ぼしているとしたら問題ですよね。
ホルモンと神経伝達物質の関係性
PMSの原因についてはまだ解明されていないとしながらも、ホルモンレベルの変動が鍵を握っていると著者は言っています。
ここで、いわゆる「ホルモン」というものがどのような働きをしているか、本の用語を引用しながら少し解説してみます。
卵巣で分泌され、女性ホルモンとして大切な役割を果たしているのはエストロゲンとプロゲステロンです。
この2つのホルモンは大脳辺縁系におけるセロトニンやドーパミンの受容体の発現を促します。
セロトニンは俗に「幸せホルモン」と呼ばれることがありますが、精神の安定に欠かせない神経伝達物質です。その受け皿を作ることを促進してくれるので、結果的にその神経伝達物質の効果を強めてくれるというわけです。
また最近になって、エストロゲンが「BDNF」という脳由来神経栄養因子の生産を促していることが確認されました。
BDNFはセロトニンの生産を促してくれるそうです。
また、月経前不快気分障害(PMDD)の症状がある女性を対象とした研究では、彼女たちの脳がセロトニンの前駆物質であるトリプトファンをうまく取り込むことができず、そのせいでセロトニンの生産が抑えられていることがわかったそうです。
PMSの症状は様々ですので、その問題にセロトニンという1種類の神経伝達物資だけが関わっているわけではありません。
ホルモンはいくつもの段階を経て脳内の信号に繋がり、それがいろいろな感情や行動として表れます。
そこまでの接続が少しでも損なわれていると、信号が別の方向に向かってしまうというのです。だから、人によってホルモン変動から受ける影響が違うのです。
運動がPMSにどう役立つのか
運動を取り入れている女性の調査をした結果、その女性たちは、運動をすれば体の症状が軽くなるだけでなく、精神面の症状も軽くなると報告しています。
運動によるPMSの精神面の改善が、実験によって証明された例は多くないとしながらも、デューク大学のジェイムズ・ブルメンタールの行った研究に次のようなものがあります。
23人の閉経前の女性を2つのグループに分け週3回1時間のトレーニングを行いました。
一方のグループは15分ウォーミングアップ、体がどれだけ酸素を取り込めるかという最大有酸素運動能力の70〜85%の強度での30分のランニング、後15分のクールダウン。
もう一方は指導を受けながらウェイトマシンで筋力トレーニングをしました。
結果、精神面で目覚ましい改善を見せたのは、ランニングをしたグループで、抑うつ感・イライラ・集中力の低下が目立って軽減されたそうです!
理由としては次のことが考えられます。
- 血流中のトリプトファンレベルが上がり、それに伴って脳内のセロトニン 濃度が上がる。
- 有酸素運動にはドーパミン・ノルアドレナリン・BDNFのようなシナプス伝達を調整する物質のバランスを整える効果がある。
- 情動を司る神経伝達物質、興奮性のグルタミン酸とGABAとして知られる抑制性のガンマアミノ酪酸のバランスを調整して、気分の変化・不安・攻撃性を和らげる。
運動という身近な取り組みで、体や心の問題が解決されるのだとしたら、取り入れてみる価値がありそうですよね。
妊娠〜産後−運動はすべきか?
妊娠中は、エストロゲンが通常の50倍に、プロゲステロンは10倍に増えるといいます。妊娠出産にかけてホルモンレベルは乱高下します。そんなに激しく変動すれば心や体に影響が出てくるのにも頷けます。
妊娠中高いレベルでホルモンが維持されることによって、精神が安定する人もいます。しかしその一方、大変な思いをする人もいます。そんな時、運動は望ましくない問題の予防を手伝ってくれます。
一般的に運動は、悪心(嘔吐)・疲労感・関節痛・筋肉痛を和らげ、脂肪の蓄積を抑えることがわかっています。
また高血糖になるリスクを半分に減らします。ある調査によると、週に5時間の速歩だけで、妊娠生糖尿病になるリスクを75%下げることができたそうですよ。
そして妊娠期にはもうひとつ気にかけるべきことがあります。
「ストレス」です。
書籍内ではお母さんの妊娠中のストレスについても言及しており、胎児に及ぼす影響はもちろん、出産後の子どもの性格や成長にも関わってくるという研究結果を示しています。
自分と子どもを守るという意味でも、ストレスを回避する手立てを考えなければいけませんね。
運動はそのためにも役に立ちます。また、胎児自体にもよい影響があるそうです。
子宮内の胎児を揺さぶり、赤ん坊が撫でられたり抱かれたりするのと同様の刺激を胎児に与え、明らかに脳の発達を促すと理論づけている。
『妊娠中の運動Exercising through your Pregnabcy』ジェイムズ・クラップ2002
でも調査によると妊婦の約60%は何も運動していないということです。
妊娠中の運動で気に留めて欲しいこと
ただ、調査・研究によって運動の有効性が認められていたとしても、それをどのように自分に適用するかはよく考えなければいけません。
医学の進歩により母子ともに無事で出産を終えることができる確率が高くなっていますが、妊娠の進行具合・高齢出産の場合など、考慮すべき事情はそれぞれあるでしょう。
我が家で言えば、私は緊急帝王切開でしたし、妹は輸血と手術が必要な出産でした。幸い母子ともに無事ではありましたが「ああ出産は命がけなんだな」と思わされた体験でした。
自分の体のこと、胎児のこと両方をよく考えて、どの程度運動を取り入れることができるのか、お医者さんとも相談しながらよく検討する必要があるでしょう。
産後うつを乗り越える
無事出産を終えて、赤ちゃんと幸せいっぱいなはずが、こんな問題に悩まされてしまうことがあります。
- 疲れ切っているのに熟睡できない
- 赤ちゃんを1人にすると罪悪感に苛まれる
- 自分の体が嫌になる
- 世の中に関心が持てなくなる
- 不意に泣き出すようになる
産後ほとんどの女性が経験する一過性の抑うつ感とは別に、このような症状、いわゆる「産後うつ」を発症する女性は、初めて出産した女性の10〜15%もいるそうです。
産後うつは、産後ホルモンの急激な減少によって引き起こされます。
妊娠は10ヶ月かけての徐々な変化ですが、出産は一気に起こる変化ですから、体がうまく対応できなくるのもわかる気がします。。。
米国国立精神衛生研究所のミキ・ブロックは、一部の女性の脳はホルモンの急激な変化についていけないか、ホルモンの変化に伴って脳内の信号が気分を混乱させる方向に増幅されるのではないかと推測しています。
運動は神経伝達物質のレベルを正常化するので、産後うつのお母さんに対しても効果が高いそうです。
どんな運動をすればいいのか気になるところですが、ベビーカーを押しながらのウォーキングでも十分効果が得られるそうですよ。
効果が実証された12週間の調査では、週3回、60〜75%の心拍数で40分歩き、週1回社会福祉の会合に参加したとのことです。
40分は長そうですが、1日おきに片道1キロのスーパーまで早足で歩いて買い物に行けば、それくらいの運動量にはなりそうですよね。
可能なら緑の多い公園を歩けば、気分も落ち着きそうです。
逆に、この程度で健康な自分の心と体を取り戻せるなら嬉しいですよね^^
是非取り入れてみてください。
更年期−閉経後も健やかに!
「生理がなくなる」=(イコール)「毎月の煩わしさから解放される!」と、喜んではいられないようです。
私も最近の傾向に乗って高齢出産でしたので、「子育て」と「自分の体調の変化」に、同時に対応しなければいけない状況にあります。40歳を超えたあたりから、今まで感じたことのない不調が訪れるようになりました。
「これは更年期障害?」と疑いつつも、生理周期と合わせて起こることから今のところ「PMS」だと判断しています。。。
何にせよ「歳をとれば体も変わるし衰えるよねぇ」と、それが当たり前として何の手も打たないのは、これからまだ続く人生をより良く生きるチャンスを無駄にしかねません。
更年期だって健やかに過ごしたいですよね。
とはいえ、多くの女性が閉経期を迎えるにあたり、何らかの不調を感じています。そしてその程度・内容は人によって様々です。
この時期には、ほてりや寝汗、怒りっぽさ、情緒不安定などの血管運動神経症状もありますが、PMSと同様に、どのような症状が出るかは、ホルモン変化を体がどのように感じるかによると言われています。
つまり、一部の女性が不安や抑うつ感に襲われるのは、ホルモンレベルが下がるためではなく、変動するためであるということです。
ここでも運動が有効に働きます。
確かに歳を取り、エストロゲン・プロゲステロンの生産が衰え、ホルモンのリズムが乱れれば、脳内の神経化学物質のバランスも崩れ始めてしまいます。その結果更年期障害と呼ばれる症状が現れますが、45歳〜60歳を対象とした調査では、週に2回以上運動をしている人は、運動をしない人に比べて、うつの身体的・精神的症状が極めて低かったという結果を得ました。
この研究では女性の幸福度や生活満足度に運動は多大な影響を及ぼし得ると結論づけています。
また、こうも言っています。
ホルモンが加齢の合図を出しても、運動が脳をだまして、生きるための機能を維持するように仕向けていると。
副作用の心配がない選択肢として「運動」は優秀で効果的
女性がPMS・妊娠〜産後・更年期といったホルモンの影響から辛い症状が出たときの対処法として、この本では一貫して運動を勧めています。
それではどのような運動を取り入れたらいいのでしょうか。
目的によって取り組む運動の種類も変わります。
体を鍛えたり、痩せたいといった目的なら筋トレも必須でしょうが、「気分をよくすること」が目的なら有酸素運動が適切です。
運動の頻度と程度も大切
それではどの程度運動すればいいのでしょうか。
本書では少なくとも
さらにPMSに悩まされている若い女性は週5日、うち2日は全力疾走のような激しい運動を組み込むといいそうです。負荷の高い運動が、イライラ・不安・うつ・情緒不安定といった症状に劇的な効果をもたらすという調査結果が出ています。
血圧・心拍数・血中酸素濃度など、自分の体の状態を数字で把握すると、体調コントロールの助けになります。生理や排卵日・イライラする日・食べた物などを記録して、数字と合わせて見ていけば、体や体調の変化の傾向も把握しやすくなります。
心拍数など体に関するいろいろな数値を計測する道具として、Apple Watchは便利です。
日常生活への取り入れ方
「運動が良いことはわかった、でも1時間のややきつめの運動をほぼ毎日行うのは、正直時間的にも体力的にも難しい。。。」と思ってしまう人は多いのではないでしょうか。
そして46歳運動歴なしの私の経験から申し上げると、初めからこの強度で運動を始めると「必ず体のどこかに痛みが出る」ということです。股関節がガクガクして外れそう、、、とか膝関節が痛くて歩けない、、、など。
情けない話ですが、びっくりするほど体は動かなくなっています。
それで運動を休まざるを得ず、結局再開されることもない、というのがよくあるパターンです。
やる気を出して頑張ることより、継続して続けられることを考えるべきです。
継続するためには決して無理せず、簡単にクリアできるレベルまでハードルを下げて行いましょう。
軽い運動を取り入れるなら朝がオススメです。朝気持ちがスッキリすればその日1日のパフォーマンスも上がります。
外に出て近所をひと回りするところから始めればいいと思うんです。もちろんただ歩くだけでもいいですが、朝早くからやっているお店に買い物に行くなど目的を作ると出かけやすくなるかもしれません。
お仕事に出かけるなら、通勤手段に徒歩を加えてみてもいいですね。
そうして朝歩くことをまず習慣化していきます。慣れてくれば速歩にしたり距離を伸ばしたりするなど、強度を上げていけばいいでしょう。
家を離れられなければ、家の前で縄跳びでも良いんです。
外の空気を吸って太陽を浴びると気分転換にもなりますし、自然の中を歩ければ気持ちが落ち着いてなお良いですよ。
家の中で実践する方が続けやすい人は、家で有酸素運動をすればオッケーです。その場合「家でどんな運動をすればいいの?」という疑問が出てくるかもしれませんね。
具体的な運動例はネットやYouTubeで検索すればいろいろ見つけられます、便利な世の中ですね。
参考までにここでもひとつ紹介しておきます。
ただ気をつけて欲しいのは、この通りに真似をすると、後で痛い目に合うかもしれません。回数を減らしたり、強度を抑えたり、自分がやりやすい運動のみを選んだりするなど、くれぐれもゆっくり体を慣らしてください!
まとめ
女性ホルモンが減ることよりも、ホルモンバランスの変動に対する脳の反応の仕方が様々な症状を引き起こすことがわかりました。
運動は脳に伝える信号を正しく結び直すために効果的かつ健康的な方法です。
私の最大心拍数の60%は130ですが、少し速めに20分程度歩いたくらいでは、心拍数はせいぜい100くらいまでしか上がりません。途中坂道や階段があると、もう少し上がってきますが。。。
130まで上げるには、「ちょっと辛いな」と感じる程度に負荷をかけなければ上がりません。
それでも、やらないよりはやった方が確実に気分がよくなることは感じられます。感情が揺れ易い時期は特にオススメです。
この本では他に、鬱・ストレス・学習・加齢など私たちの生活の様々なシーンで悩まされる問題について、脳機能と運動の関係性の観点から解説してくれています。
どのようにありたいか、どのように生きたいかという個人的な望みによって、有効な運動や量、行う時間帯も変わってくるでしょう。
自分にぴったりな運動をカスタマイズして「幸せだ!」と感じながら毎日を過ごしていきたいものですね。
ぜひ一度読んでみてください。
何やってるのっ!いい加減にしなさい!(子どもへ)