海外生活で幼児期の子どもの日本語を伸ばす2つの具体的な方法

ママ
海外で生活している子どもの日本語ってどうやったら伸ばせるの?

日本で生まれて、日本で育った私たち親にとって、日本語は当たり前にあった言語環境です。

親が、兄弟が、友だちが、先生が、そしてテレビも、みんなみんな日本語を話していました。学校でも当たり前のものとして勉強して。好き嫌いこそあれ、日本語=国語を勉強しないという選択肢なんてありませんでしたし、考えもしませんでした。

でも、日本語が身近に存在しない海外で過ごす子どもは違います。
親が環境を作り、教えていかないと、子どもは日本語を話せるようにはなりません。

どうやってその言語環境を作ればいいか、知りたいと思いませんか?

この記事では、そもそも「言葉」とはどんなものなのか、また家庭で子どもに日本語を学ばせる具体的な方法についてお話ししたいと思います。

言葉の役割

言葉はよく、「コミュニケーション・ツール」と呼ばれますよね。実際その通りで、お互いの共通言語があれば、違う国の人とも言葉を通して、理解し合うことができます。他にも伝える手段はありますが、言葉は群を抜いて役に立ちます。
言葉をツールとして使う時、

  • 気持ちや意見など自分の言いたいことを伝える。
  • 相手の言いたいこと・気持ちを理解する。
  • 疑問に思うことを質問する。
  • 質問に対して的確に答える。

などを行うことができます。
箇条書きにされたものを見れば、当たり前のようなことですね。

ですが、子どもにとっては当たり前ではありません。

言いたいことを言うには、それを表す語彙が必要ですし、相手に伝わるようにまとめる力が必要です。相手を理解するのにも、共感できるだけの知識と経験がいります。質問に答えるには、何を聞かれているか理解し、的確にその情報を記憶から引き出さなければいけません

つまり、話す(言葉に表す)ためには、考える必要があるのです。そして、考えるためにも言葉が必要なんです。

私は英語でやり取りをする時、相手から話される言葉は英語ですし、相手に話す言葉も英語です。ですが、頭の中で巡らせる思考は日本語です。
思考の結果を英語を使ってアウトプットしているんです。

その言葉を使うことに慣れてくると、スムーズに会話の行き来ができるようにはなりますが、結局は、理解が深い方の言語が思考力を支えているのです

必要なのは、言語力に裏打ちされた思考力です。

  • 知識や経験から、予測・推理する力
  • 新しいアイディアを見つける力(発想力)
  • 物事を工夫したり、改善したりする力
  • どうやったら上手くいくか問題を解決する力
  • 古い知識と新しい知識を比較・統合する力

といった考えることそのものも、言葉の大きな役割なのです。
「言語力」は「思考力」と言ってもいいほど、人は言葉によって思考しています。

言語力が思考力を伸ばします。でも反対に、「思考することによって言語力を養うことができる」とも考えられますよね。

そのような思考のための言語力を身につけるためには、言葉のインプット(言葉を聞く・経験する=語彙と使用例を得る)とアウトプット(言葉を使うこと=話す・考える)を日頃から心がける必要があります。

難しそうに感じますか?

でもこれ、すでにやっていることを意識的に行うだけでも、効果的に言語力を伸ばすことができるのですよ。
すでにやっていること、それは「子どもと話をすること」と「絵本の読み聞かせ」です。
「えっそんなことで?」って思いました?
はい!そんなことなんです。

日常的に繰り返し行うことだからこそ、効果的な方法を知ると、より効き目があるのです。

思考力を伸ばす「話しかけ」の方法

子どもと話をする。
そんな当たり前の日常でも、意識するだけで学びの時間に変えることができます。

日々、使える語彙を増やし、自分の言葉を獲得していく幼児にとって、日常生活は大きな学びの場です
ここで具体的な言葉をしっかりインプットして、言語の土台を作ってあげることで、小学校以降に抽象的な言葉を学びやすくするのです。

では、意識するポイントを見てみましょう。

  1. はっきりと滑舌よく話す

    明瞭でない言葉は、聞き取れません。聞こえない音は発音できません。
    特に、早口の自覚のあるお母さんは気をつけてくださいね。

  2. お母さんは幼児語を使わない

    「ワンワン」「ブーブー」などを擬音語として使うのはもちろんいいのですが、名称としてはNGです。覚え直す必要がないように、初めから、正しい言葉で覚えさせましょう。

    でも、もし子どもが使っても叱らないでくださいね。
    お母さんがちゃんとした名称で返答してあげればいいですよ。
    子ども
    「ワンワンがいるよ」

    ママ
    「本当だ、大きい犬だね」

  3. 子どもの話は最後まで聞く

    子どもは、まだうまく話をまとめることができません。聞いていてまどろっこしく感じるかもしれませんね。
    でも途中で話の腰を折ったり、イライラしたら、子どものせっかくの話したい気持ちを摘んでしまいます。

    じっくり聞いてあげて、うまく言えてない時は、「砂場に大きな穴を掘ったのね、それで?」と相槌を打つ感じで、お母さんが言い添えてあげるといいでしょう。

    また、別の表現で言い換えてあげてもいいかもしれません。

    子ども
    「あっくんのネコちゃん、ふわふわでね、すべすべなの。」

    ママ
    「へえ、それは触り心地が良さそうね。」


    聞いてもらえた喜びと、わかってもらえた嬉しさで、話すことに意欲的になります。

    1つだけ注意点があります。
    子どもは時に、早く自分の話を聞いて欲しくて、夫婦の会話に割り込んでくることがあります。
    そんな時は、「今、お父さんとお話ししているから、少し待ってね。」と言って、待たせましょう。
    特に幼児期は、話題の中心になりたがったり、自分を含めずお母さんと話すお父さんや兄弟にヤキモチを焼いたりします。
    しかし、そうした時に子どもを優先していると、なんでも自分の意思が通ると思い込み、ワガママになってしまう恐れがあります。
    小学校に上がってからの友だち関係に悪い影響が出てしまっても困ります。

    他の人の会話に割りこまないというマナーと一緒に、「相手が話し終わるまで待つこと」を、幼児期にしっかりと覚えさせましょう。

    そして、夫婦の会話が終わったら、改めて「よく待てたね。何のお話だった?」と子どもの話を聞いてあげるようにしてください。後でちゃんと聞いてあげることで、自分が大切にされていると感じられます。

  4. 子どもの「何で?」を丁寧に扱う

    子どもの「なんで?」はエンドレス質問です。時には鬱陶しく感じることもあるかもしれません。
    繰り返しになりますが、子どもは生活の中に学びがあります。疑問に思う気持ちを大切にしてあげましょう。

    ポイントは、すべてには答えず、たまには質問に質問で返すことです。
    ママ
    「どうしてだろう?何でだと思う?」

    「お母さんはこう思うけど、〇〇ちゃんはどう思う?」

    お母さんの切り返し次第で、子どもにも考えさせることができます。

  5. 子どもに考えさせる言葉がけをする

    子どもが大きくなってくると、面倒臭がられてしまいますが、小さいうちはお母さんの問いかけにもよく答えてくれます。
    (例)
    分類観点を考えさせる問いかけ
    ママ
    みかんにはどんな仲間があるかな?

    子ども
    鯉(色)・グレープフルーツ(柑橘類)・どんぐり(木になる)・りんご(くだもの)・テニスボール(形) ()内は分類カテゴリー

    色・場所によって分類されるものを考える問いかけ
    ママ
    冷蔵庫の中にある白いものは何がある?

    子ども
    牛乳・豆乳・豆腐・卵・大根・カブ

    複数の条件を満たす答えを導き出す問いかけ
    ママ
    空を飛ぶもの、人が乗れるもの、エンジンのないもの、なんだ?

    子ども
    グライダー・ハンググライダー・気球・パラセーリング

    条件に合った事柄を、できるだけたくさん考え出す問いかけ
    ママ
    『あ』のつく言葉をたくさん教えて

    子ども
    あんこ・アイスクリーム・アヒル・アンキロサウルス・歩く・遊ぶ

    などなど。
    言葉を抽象的に捉えたり、推理したり、概念化したり、お母さんの問いかけから子どもの思考力を伸ばすことができます。
    反対に、子どもに問題を出してもらってもいいですね。適切な問いを考えることも、頭を使う活動です。

    考えることで、言葉の感覚が磨かれます。

  6. 実際に経験することを増やす

    もちろん、公園に行ったり山に行ったり、どこかに出かけて得られる体験はすばらしいものです。でも、特別なことじゃなくて構わないんです。

    掃除機をかけたり、お料理や洗濯をしたり、そんな日常の細々したことに、学びはたくさん隠れています。
    子ども
    ・ハンガーはどうやって使うの?何のために?
    ・どうしてアイロンをかけるの?
    ・何でアイロンに水を入れるの?
    ・何でアイロンは熱くなるの?どうして湯気が出るの?
    ・どうしてお父さんは会社にシワシワのシャツを着て行くのはイヤなの?
    ・何で干す前に洗濯物をパンパン伸ばすの?
    ・洗濯機に入れる前に何でお母さんのブラウスを裏返すの?


    こういった疑問をクリアする過程に、物の名称・役割・自然科学・物理学・数の概念・社会的マナー・ふさわしい行動を学び、考えるチャンスがあるのです。

    特に料理は、物質の変化がよくわかる1番身近な科学です。是非取り入れてみてくださいね。

    私の個人的な意見ですが、子どもが小さいうちは、最近流行のミニマル生活のような「生活感のない家」よりも、適度に物が揃った「生活感のある家」の方がいいと思っています。

    海外に住んでいればなおさら、家庭にない物は知る機会がなくなります。台布巾・お猪口・お椀・銘々皿など、見たり使ったりすることで、名称や用途を知ることができます。言葉が文化となる所以はそこにもありそうですね。
    物が少なければ、それだけ子どもの知る機会が減ってしまいますので、子どもの成長のためにも「生活感」を大切にしていきましょう。

    経験に基づいた事がらは、長期記憶に残りやすくなります。楽しくて学びにもなる、一石二鳥です。


いかがだったでしょうか?
1度に全てをやろうとしなくて大丈夫ですよ。できることからやってみてください。
意識して声がけをするだけでも、すでに今までとは違う働きかけができているはずです。

できそうなことを、スケジュール帳やカレンダーに書き込んで予定に組み込んだり、やってみたいことリストを作るのもオススメです。
11/29しりとり大会、12/1白いもの探し、12/3ギョウザ作りを一緒にする、など。

思いついたアイディアもすぐにメモしておくといいですね。
ちょっとした工夫で、忘れずに思い出し実行することができます。

交わす言葉を大切に、毎日を積み重ねていきましょう。

日本語力を身につける「読み聞かせ」の効能

次は読み聞かせについてです。

日常会話だけでは、使う語彙が限られてしまいます。
本は毎日読んであげましょう。


この先、忙しくて日本語の時間が取れなくなったり、現地の言葉や勉強を優先しなければいけない時がやってくるかもしれません。細々とでも日本語学習の時間を維持するために、読書習慣は最も役に立つものです。

子どもを本好きにするための足掛かりとなる「読み聞かせ」ですが、その効能には、どんなようなものがあるのでしょうか。

  • 語彙が増える

    本に書かれた豊かな言葉を聞くことで、豊富な語彙力を養うと同時に、日常では使わない言い回しや、表現方法にも触れることができます。

    例えば「山間の村」「深い谷底」「吹いたら飛びそうな家」「割れんばかりの拍手」など、こうした言い回しはゼロから浮かぶわけではありません。

    多様な言葉に触れ、「どこかで聞いた言葉」を使ってみることから始まり、組み合わせたり自分なりに応用しながら、使える言葉として自分のものにしていきます。

    そのための基盤となる語彙や表現方法に触れる身近な機会こそが、本の読み聞かせなのです。
  • 言葉による表現からイメージを作る練習ができる

    豊かな言葉に触れることで身につくのは、語彙や表現方法といった知識のみではありません。
    海がどんな様子だったか、どんな美しさの湖だったか、どれほど恐ろしい山道だったか。

    情景を表す豊かな言葉に触れることで、想像力もアップします。
  • 読解力が身につく

    文章から意図を読み取る力が養われます。また、全体の大まかな内容を把握できるようにもなるでしょう。
    何が書かれているか、文字情報から読み解いていけるようになれば、自分で情報を収集し、知識を身につけることができるようになります。

  • 文脈情報を読み取る

    日本語の大きな特徴の1つに、登場人物による言葉遣いの違いがあります。
    話す言葉を聞くだけで、どんな人物なのか、推測することができます。

    若いのか、年取っているのか、子どもか、男か女か、昔の人か、侍か、、、、方言によって、場所も特定できたりします。
    私たちはこれを感覚的に捉えることができますが、外国語として日本語を勉強する人たちにとって、この言葉遣いの違いは相当難しいもののようです。

    また、文章には直接書かれていないことを読み取る、いわゆる「行間を読む」ことも日本語の文章理解には重要な要素です。

    これほど文脈的情報の多い言語は他にないのではないでしょうか。

    子どもたちは、読み聞かせによってこの難問もクリアしていきます。
  • 日本語の楽しさを知る

    母音を基調とした音節を持つ日本語は、そのリズムや音の響きに独特の美しさや面白さがあります。声に出して本を読んであげることによって、それが一層際立ち、耳に響きます。

    音を聞き、その音を真似て発声することは、言語獲得の基本ですよね。
    日本語の魅力を味わいながら、正しい発音も学びます

  • 感動体験を味わう

    何と言っても物語を読む楽しさは、登場人物を通して、ストーリーを経験し、感動を体験することでしょう。
    ハラハラドキドキ、嬉しい悲しい、怖い寂しい苛立ちといった様々な感情を味わうことができます。

日本語には独特なニュアンスがあり、それは日本そのものと深い関係があります。季節・生き物・建築・文化、それぞれの捉え方や感じ方も外国とは異なります。

以前、夫と「食文化」について話していたら、「チェコでは『食』は文化じゃない!」と言われ、ガガーンとショックを受けました。まあ、他のチェコの方々からは反論があるかもしれませんが、、、それにしても、それぞれ国柄があるんですよね。

海外にいながら、全てを知ることはできませんが、日本語を読み、語ることで、その国柄やニュアンスの感覚も養っていきます言葉は文化です。家庭の中だけでは学べないことを本から学んでいきましょう。

本の読み聞かせをしているうちに、文字を読むことにも自然と慣れていけるのもメリットですね。

「読み聞かせ」の効能はお母さんにも!

さらに、朗報があります。
「読み聞かせ」はお母さんの精神安定のためにも効果があるんですよ!
膝に抱いて読んであげると、スキンシップも取れますしね。
お母さんは、子どもに対するイライラ・子育ストレスが軽減できる。子どもはお母さんが機嫌よく楽しい本を読んでくれて嬉しい。子どもが喜ぶ、お母さんもハッピー、お互いにとって最高ですね!

「『本の読み聞かせ』が親子共に効果絶大な根拠」東洋経済の記事はこちらから


ちなみに、読み聞かせる本の種類も非常に重要なポイントですので、日本語のインプットに役に立つ本も今後記事で紹介させていただく予定です。

まとめ

子どもが言語を獲得していくのは大変なことです。生活の中に、日本語と現地語の2言語があれば、なおのことです。
でも、良質な言葉がけと読み聞かせをすることで、「お母さんとの絆を深めること」・「思考力を支える言語を作ること」という両面に良い効果が得られます。


焦りは禁物です。よその子との比較も禁物です。

でも、何もしないまま過ごしていては、日常会話の域は超えません。時間をかけて、意識的に取り組まないと、言語は育っていきません。

「お腹が空いたね、夜ご飯は何を食べようか?」といった会話も大切ですが、「どうしてお腹が空くんだろう?」といった自然科学的な内容に触れたり、日本と現地の食べ物や食べ方の違いを比較するなど、視点や角度を変えた話題を話し合う機会を持ちましょう。

日々の話題を幅広く持つことで、子どもは様々なことに目を向けることができ、その興味を深めたり、考えたりするきっかけになります。

子どもの日本語にはお母さんの支援が必須です。

感度の良いアンテナを立てて、役に立ちそうなこと・面白そうなことを、生活の中から拾ってみてくださいね。
子どもに負けないくらいクリエイティブに、日本語への触れ方を考えていきましょう。

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