ハーフの子の日本語教育を幼児期に優先する3つの理由|海外在住ママ必見!

(ママ)
「このまま日本語で話しかけてていいの?」

「日本語学習させることが子どもの負担になってる?」

子どもの言語の問題は、海外で子育てをしていれば、一番の悩みと言ってもいいほど大きな関心事です。

「日本語の話し手は自分しかいない!私が頑張らないと!」と思う反面、「日本語を話させることで、この子の言葉の成長を遅らせてる?」と不安に思うこともありますよね。
ましてや、幼稚園に通い始めて、日本語が出づらくなったと感じる状況があったら、なおさらです。

でも、お母さんが自信を持って話せる言語が日本語であるなら、日本語で話しかけることは大正解。
もっと言えば、幼児期は、どんどん日本語をインプットしてあげなければいけない時期なのです。

この記事では、海外で子育てをされている方向けに、なぜ現地の言葉だけでなく、日本語も子どもに教えた方が良いのかと、特に幼児期こそ日本語教育に力を入れるべき理由を解説します。

子どもの言語の発達で知っておきたいこと

初めての言語というものは、単にコミュニケーションのための道具ではありません。
人間形成そのものにも、大切な役割を担っているのです。
大袈裟ではありません。

子どもは、生まれてから長い期間、かなりの時間を親と緊密な関係で過ごします。

思い出してみてください。「あーだぁー」としか言ってなかった赤ちゃんが、言葉を獲得していく過程を。個人差はあれ、初めての発語まで2年くらいかかります。そのプロセスはどれだけ大変なものだったでしょうか?

「水」ということばを獲得した時、それは単なる言葉の記号を獲得したのではありません。

  • 喉の渇きを感じた時に、口に流し込まれた水
  • 沐浴した時に、体を濡らし、浸かったお湯
  • 雨に降られて濡れた顔
  • 手を洗う時、水道から流れる水

様々な水の体験を繰り返し、それを母親が伝え言うのを聞き、自分で音を試し、探り、「水」という言葉を獲得するのです
「水」という言葉になった時、そこには、たくさんの周辺情報が含まれているのです。

それによって、場面や状況によって触れる形が変わっても、「水」という言葉を使うことができるのです。

あんなに種類も多く、見た目や大きさも様々なのに、「犬」という言葉で認識できるのも、「犬とは?」という、くくり方の概念を獲得しているからです。

その膨大な体験と言葉の持つ音とをつなぎ合わせること、そして概念を獲得すること、さらに、それを人に向けて使い、自分の気持ちや意思を伝えること、それらを親から学んでいくのです。

親はどれだけ言葉を赤ちゃんと交わしていると思いますか?
ウエルズという人の研究では、「大人は平均して1分間に3回子どもに話しかける」のだそうですよ。

そしてさらに、言葉を使って考えることを学び、日常生活から行動パターンや価値観を学んでいきます。
親の持っている文化も受け継ぎ、アイデンティティも身に付けます

その子の人としてのルーツを作ります。

親が言葉を通して、子どもに受け渡しているものの大きさを感じますよね。

親が不得意な言語で子どもと話すことによる悪影響

もしあなたが、ネイティブの人と遜色のない言葉をお持ちならば、それを使ってお子さんを育ててあげてもいいかもしれません。
でも、そうでないならば、不得意な言語・未熟な言語で子どもに語りかけることは、間違った情報を渡してしまう危険があり、お勧めできるものではありません。

「早く、子どもに英語を話してもらいたい」と、英語で話しかけていたら、子どもに変な発音の癖がついてしまい、直すのが一苦労、、、なんて話、聞いたことがありませんか?

子どもと日本語で対話すること、日本語で基礎的な言語力をつけてあげることは、ネイティブ・レベルの現地の言語力を持っていないお母さんにとっては、とても大切なことなんです。

だからこそ、お母さんは日本語で話す必要があるんです。

子どもを取り巻く環境について

さて次に、子どもの今の言語の環境を見てみましょう。
国際結婚家庭の場合、子供が幼稚園に通いだすと、子どもの言語環境は、ほぼ外国語です。
言語を使う環境は、家庭・学校・地域社会3つです。

海外に住んでいれば、学校、地域社会は海外の言葉、家庭も片親が外国人ならば、2.5が他言語、そして、お母さんの話す0.5が日本語ですよね。

幼稚園に通うようになると、先生のお話、お友だちとの会話はもちろん、街で聞く声、書かれているもの、全てが現地の言葉です。もちろん、お父さんと話す時は、お父さんの言語です。
圧倒的に外国語が優勢なんです

だから幼稚園に上がれば、子どもの生活範囲が広がった分、単純に現地の言葉との接触量が増えるので、日本語使用率が下がり、言葉が出辛くなることがあるのも仕方がないことなのです。

新しい環境で頑張っている我が子を頼もしく思う反面、子どもの日本語が心配になるのはこの辺りからです。

日本語は幼児期に力を入れて取り組みましょう

現地語優勢のこの状況は自然なことだし、子どもが幼稚園生活を充実させるためにも、現地の言葉を磨いていくことは、大切で必要なことです。

でも、今この時期に日本語の土台をしっかり作ってあげることは、同じようにとても大切なことなのです。
親が子どもに受け渡すものの大きさについては、先ほどお話ししましたが、その媒介となる言語力は、放っておいて伸びるものではないのです

でもなぜ、特に幼児期に頑張るのでしょう?

それには3つの理由があるんです。

理由その1、小学生は忙しく、時間に余裕がなくなるから

まず1つは時間です。
幼稚園の後の小学校も現地校を選ぶなら、今家庭で、力を入れるのは日本語です。
小学校では、学習はもちろん、友だち、先生、地域の人との会話も外国語です。それは幼稚園も同じでしたね。
でも、より一層結びつきが強くなります

共同の意識が強くなるし、友だちの重要度も上がります。
会話の量も質も本人の話したい欲求もどんどん上がっていきます。
また、放課後や週末に遊ぶ約束をしてきたり、学校外での習い事やアクティビティの数も増えます。
もちろん、宿題を毎日こなし、「勉強する」という新しいスタイルにも慣れていかなければいけません。

幼稚園の間は、好きな時にお休みも取れたけど、学校は休まず通うことが前提になっていきます。

今よりもずっと忙しくなり、日本語にかけられる時間は、物理的にグッと減ってしまうのです。

幼稚園とはガラリと変わった、新しい環境・生活スタイルに慣れるため、現地の言葉を優先させ、子どもの生活を安定させることが第一となるのは、至極当然のことなのです。

学校に通うようになると、思考の元となる第一言語も現地の言葉の方が強くなっていきます。第一言語には日常会話力だけでなく、学習言語が必須だからです。

チェコに住んでいる我が家の娘は現在小学生で、チェコ語の現地校に通っています。文字はアルファベットを使用しますが、アクセント記号を用い、独特な発音があります。正しくきれいな発音のために、娘は合唱サークルと演劇サークルに入っています。
他にも音楽器や大好きな爬虫類飼育サークルなど、あっという間に1週間が過ぎていきます。

海外で成長していくならば、現地で使う言葉は大切ですから、それも致し方のないことです。
環境に慣れるまで、日本語学習は少しお休み…なんてことも出てくるでしょう。

だからこそ、日本語への取り組みは、小学生に上がる前の時間のある幼児期に力を入れておくと良いのです。余裕があれば、平仮名カタカナも習得してしまいましょう

理由その2、お母さんの一番自信のある言語で話しかける必要があるから

2つ目の理由は、お母さんの言葉が「母語」になるためです。

「母語」という言葉を聞いたことがありますか?
母語は、子どもが出会う「初めての言葉」のことを言います(トロント大学名誉教授 中島和子氏による)。
一番身近な大人の話す言葉、つまり親の言語が子どもの母語になります。

親の文化・アイデンティティと直結した言葉は、子どもの言語の根を作ります。

母語としての日本語という観点からも、母親から日本語を習得する意味があるんです。

母親が一番得意な日本語を使えば、感情を乗せて、自信を持って、豊かな表現で、豊富な語彙で、子どもに話しかけることができます。そうすることで、子どもの言語を豊かに形成できます

そして、特に覚えておきたいことは、子どもの言語は、母親の話す言語を超えることはないということです。
母親が、理解の浅い未熟な外国語で話すと、子どもの言語が貧しいものになってしまいます。

両親がそれぞれ異なる言語を話す家庭で育つ場合、2言語が同時期に発達するように思われますが、母親の方が接触時間が多ければ、母親の言語の方が強くなります。

しかし基本となる言葉が獲得できれば、次の言語の習得も容易になります。すでに言葉の機能と概念を知っているからです。

我が家の娘のことを、少しお話しさせてください。

チェコの小学校は、子どもの知的言語レベル・精神レベルによって、就学時期を1年遅らせることができます。その判断は、年長児の時に心理カウンセラーによる診断を受け、親とカウンセラーとの話し合いによってなされます。

ハーフの家庭では、チェコ語の習得度を理由に、1年遅らせることを勧められることが少なくありません。
娘の場合も、小学校の入学申し込みをする前に、チェコ語が足りていないことが問題になりました。。。確かに、私でもわかるほどでしたので、親としても心配しました。

でも結論として、「学力的に劣っているわけではないので、やってみましょう」ということになり、そのまま進学したんです。

確かに1年目は大変でした。平仮名は書けるようになっていましたが、アルファベットは未習得の状態、チェコ語の本も読んでいませんでした
それでも、1年かけて追いかけて、2年生にはかなり改善され、書き文字もきれいになり、3年生の今は成績的に見ても問題はありません。スラスラ読むこともできています。

幼児期の娘の日本語能力は、日本在住の子どもと比べても遜色のない状態でした。反対に、チェコ語は、父親がチェコ人の割には、日常的なチェコ語との接触量が少なかったため、かなり遅れている印象でした。それでも、小学校に入ってからのキャッチアップの時間は驚くほど早かったと思います。
日本語の言語力を借りたおかげです

その言語の基礎を作るのが、子どもの母語を作るお母さんです
母語がしっかりしていなければ、小学校以降の現地の学習言語もおぼつかないものになってしまいます。

理由その3、お母さんとの信頼関係を育むため

幼児期にこそ日本語習得に力を入れる最後の理由はとてもシンプルです。
それは、あなた…つまり、お母さんとの絆を育むためです。

子どもにとって、お母さんの存在は絶対で、いつだって大好きです。

この時期の母子の結びつきはとても強く、その分とても重要になります。
幼児期のお父さんはおまけのようなものです(もちろん大切でないわけではありませんよ!)

子どもとのコミュニケーションは、スキンシップや表情や態度など様々なものがありますが、言葉によるものは、お互いの理解のためにとても重要であるのは言うまでもありません。

だからこそ、しっかりと子どもと向き合い、子どもの声を聞き、適切な言葉がけをすることは、親子の信頼関係を築くためにもとても大切なものになるのです。

しかし、先ほどお伝えした通り、お母さんが不慣れな現地の言葉で頑張って話そうとすれば、かえって子どもの言語力に悪影響を及ぼす可能性もあります。

そのため、お母さんは使い慣れた日本語で話しかけ、子どもはその日本語が理解できるようになってもらう必要があります。日本語力を養うための取り組みも取り入れていかなければいけません。でも、親子で過ごす日本語学習の時間が楽しいものであれば、子どもはその活動そのものが好きになります

大好きなお母さんと楽しい時間を過ごすことができるのですから。

日本語学習に取り組む時は、「楽しい」をキーワードに、工夫をしてくださいね。

まとめ

このように、幼児期にお母さんと日本語で対話し、しっかりとした言葉の基盤を作ってあげることは、子どもの言語の発達上とても大切なことなのです。

でも、もしかしたら、2言語を話させることで、現地の言葉が遅れないか心配されているかもしれませんね。
実際にそう感じる状況もあるかもしれません(我が家のように!)。

それでも、子どもが言葉を通して、自分の気持ちを表現できる(アウトプットする)機会を奪ってしまうことの方が、よりその先の成長が危ぶまれるものなのです。

2つの言語を学ぶということは、全く別の言語の袋が2つできるのではありません。2つの言葉は共通して同じ根っこを持っているのです。

母語で培った基礎言語力は、2つ目の言語の習得にも有効に使われます。

お母さんとの絆・必要な言語力、共に育てていくためにも、幼児期の家庭での、日本語への取り組みは、大切にされるべきものです。

難しく考える必要はありません。要は、お母さんも子どもと一緒になって、その時間を楽しむことを目指せばいいんです。
子どもが興味を持っていることに目を向け、話しをしたり、知識を深めたり、それを発展させる取り組みを考えてみてください。その過程に「言葉」は常に共にあります。
興味があれば知識欲が増し、楽しければ自然に言葉も増えますよね。

子どもはあっという間に大きくなりますよ!今の時間を存分に楽しんでください。

カナダのライアーソン大学 幼児研究科で継承語教育を教えるRoma Chumak-Horbatsch 教授の「家庭言語の大切さ」を訴えるパンフレット(日本語)がこちらからダウンロードすることができます。

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