海外在住の子どもの漢字学習|お母さんが知っておきたい難しさのポイント

ママ
平仮名はなんとか覚えたけど、漢字を覚えさせるのは難関だわ
どうやったら覚えてくれるのかしら?

海外在住者を悩ませる最大の難関とも言える「漢字」。
使えるようになれば、漢字は文章を理解する上でとても役に立つものですが、何せ数が膨大ですので、習得するのは大変です。

でも子どもが漢字習得を難しく感じるのは、覚える数が多いからだけではありません。

この記事では、子どもが漢字を習得する際につまづく点・難しく感じる点について提示し、今後の子どもの漢字学習をスムーズに導くお手伝いをします。

平仮名・カタカナとは違う漢字の難しさ

「漢字学習は難しい」と漠然と思っていても、具体的に「何が」「どうして」難しいかわかっていないと、その対策が取れません。

ここで「平仮名」と「漢字」の文字自体について改めて考えてみましょう。

平仮名は表音文字で、それ自体には意味のない文字なので、文字列の組み合わせによって意味が生まれます。ですので、読んだ言葉のから意味を紡いでいきます。

「あめ」と平仮名で表記されると、それだけでは「雨」なのか「飴」なのかわかりません。でも「め」と「あ」を強く読んだ時は「雨」、「あ」と「め」を強く読んだ時は「飴」だと音からわかるように、「あめがふった」と文脈の中で読めばその意味を捉えることができます。

反対に漢字は表意文字で、文字自体に意味を含みますので、視覚的に文字を捉え、意味を抽出し文章を理解していくことができます。

このように文字としての性質が違う「仮名文字」と「漢字」ですが、一般的に仮名文字より漢字の方が習得が難しいと感じてしまう点は何でしょうか。

ポイントは2点あります。1つは漢字のの難しさ、もう1つは読みの難しさです。

形の難しさ

平仮名・カタカナといった仮名文字と漢字の形の上での違いは何でしょう。
それは画数の多少による密集性構成要素の形状によるビジュアルの違いでしょう。
仮名文字は線の組み合わせでできた文字なので、線のたどり方・配置の仕方を認識して、文字を書きます。

しかし漢字はもっと構造的な文字です。
基本的な漢字や部首となる部分を1つずつのパーツとして認識し、それを組み立てて1文字を構成します。

また平仮名は曲線で書かれるため、丸い柔らかなイメージになりますが、漢字は直線ときっちりと曲がる角で密に構成されるので、堅牢なイメージになります。カタカナは直線的にはなりますが、線の組み合わせで成り立ち、密度が低いことから平仮名により近いイメージになるでしょう。

視覚的にイメージの違う文字なので、並んで配置される時に認識を変えて注目することができます。

  • さくやうちのむかいのとおりでさわがしいおとがしたので、まどからそとをのぞいてみたら
  • 昨夜家の向かいの通りで騒がしい音がしたので、窓から外を覗いてみたら

この2つの文章を見比べてみると、その差は一目瞭然で、漢字が交じることで単語の切れ目がわかりやすくなっています。

しかし、構造的に捉えるのが困難な子どもの場合、書き慣れない漢字を書く際は、パーツの組み立てがうまくいかず、字形を整えて書くのが難しくなります。どこにどうそれぞれのパーツを置いたら、バランスよくスペースに配置できるのかをうまく考えて書けません。

線の長さや位置が少しずれるだけでも漢字のバランスが変わってしまうので、正しいパーツの形・位置を記憶する必要があります。

読みの難しさ

漢字は、中国から入ってきた時に、中国的な読み方「音読み」を取り入れると同時に、同じ意味となる漢字に日本での言い表し方である「訓読み」も加えました。そのことにより、1つの漢字に複数の読み方があります。
このことは、日本語を豊かにしてくれますが、海外学習者にとっては、大きな困難になっています。

訓読みする言葉は「話し言葉」として普段の会話でもよく使うので、子どもも馴染みやすく漢字も捉えやすいのですが、以下の例のように同意の熟語=音読みになると途端に意味の把握が難しくなります。

  • 消える=消失
  • 使う=使用
  • 落ちる=落下

このように使われ方によって読み方を変えなければいけない言葉は、他の言語に例がなく、子どもが難しく感じてしまうポイントとなります。

このような漢字習得の問題点を解決するための「音訓読みの勉強の仕方」については、改めて記事を書く予定でおりますので、少々お待ちください。

海外の子どもが漢字を覚えるのが大変な3つの理由と対策

一般的な漢字の形と読みの難しさについて見てきましたが、次に海外に住んでいる子ども特有の問題を考えてみましょう。

漢字を覚えるのが大変になってしまう3つの理由を挙げ、それを解決するための家庭でできる対策も考えてみます。

1.漢字以前に語彙の少なさが問題

漢字学習を困難にしている1つ目の理由は、語彙の少なさが関わってきます。

漢字以前に、そもそもその言葉を知らない、または馴染みがないために、漢字で書き表されても記憶に残りにくいのです。言葉として認知されていなければ、単なる形の記憶になってしまいます。

意味やそのイメージが漢字の形と結びついた時に、より長期記憶として残りやすくなりますので「覚える漢字の意味」「使われる背景」がわかっていることはとても大切です。
ですので、普段から次のようなことに気をつけて子どもと接しましょう。

言の葉洋々
  • 簡単に理解できる言葉で済まさない、あえて違う言葉で伝える。
    「早く行きなさい」→「集合時間に遅れるよ」「授業に遅刻するよ」
  • 「それはどういうことか」言い換えた言葉で表す、あるいは言い換えた言葉で返事をする。
    「ドキドキした」→「鼓動が早くなる」「それは緊張したね」
  • 時事ネタや科学系の話題など会話の幅を広げる
  • 本を読むなど、会話に挙がらない語彙も増やす

2.日常的に反復する機会が少ない

漢字学習を困難にする2つ目の理由は、反復する機会が少ないためです。

1度学習してせっかく覚えても、繰り返し思い出す機会を作らなければ、記憶として定着しないで忘れてしまいます。
それは、海外在住、現地校という社会生活のほとんどを日本語以外で過ごしているのですから、仕方がありません。

でも、1度の経験でも忘れられないことってありますよね。心に残る強い体験した時、感情が大きく動いたり高ぶったりした時、そんな時はたった1度でも記憶に深く刻まれます。

そんな感動的な出会いを漢字学習に求めるのは難しいですが、それでも漢字を記憶に残すためには「定期的に思い出すこと」と「体験すること」が有効です。

これを踏まえ、次のことに気をつけて漢字学習に取り組んでみましょう。

言の葉洋々
  • 記憶のメカニズムを使って長期記憶化する
    長期記憶に残すためには期間を空けて思い出すことが重要です。初めてその漢字を学習した後、3日後・7日後という期間を空けて復習し、その後1〜3カ月に1回程度は思い出す機会を作りましょう。
  • 体験すると記憶に残りやすくなる
    漢字を覚える時に字面だけを覚えるのではなく、ストーリーや絵などを使って光景やイメージとマッチングさせながら覚えると、より記憶に残りやすくなります。

3.頭にイメージできないから覚えられない

漢字学習を困難にする3つ目の理由は、親が「漢字は書いて覚えるもの」という間違った勉強法を信じていることに原因があります。繰り返し書くという作業は記憶にあまり効果がないだけではなく、子どもにとって苦行になるというマイナス要因しかありません。

書籍を活用して「勉強法そのもの」を親が学ぶことで、子どもが楽しみながら効率よく学習を進められるようになります。
「書かずに覚える漢字勉強法」については「絶対学力」という本が参考になりましたが、残念ながら現在は絶版となってしまっています。
最近出版された本では、菊池洋匡先生の本が気になっています。最新の科学的研究に基づいた勉強法をご自身の進学塾でも実践しており、私がとても信頼している先生です。
記憶のメカニズムを知って、正しい勉強の仕方が身につけば、よりスムーズに学ぶことができるでしょう。

本の中で書かれている記憶のメカニズムについての内容の一部はこちらでも読むことができます。参考にしてみてください。

海外在住者に嬉しいKindleでの電子書籍化もされました。是非読んでみてください。

「覚えた」ということは、「頭の中に漢字のイメージを思い浮かべられる状態である」と理解しましょう。
頭の中に形を思い描けないものは、紙の上にも再現できません。

効率よく覚えるためには、次のことを意識して漢字学習に取り組みましょう。

言の葉洋々
  • 初めからイメージを意識して覚えるようにする
    実際に書く前に、頭の中に覚える漢字を空書きができるようになるまで記憶に止める。
  • 実際に書くのは、頭の中でイメージ書きができるようになってから
    頭に描けないものは、実際にも書けません。無駄に書く練習に時間を割く前に、初めから正確に再現できるように頭の中で思い出す練習をしましょう。その方が効率的です。

漢字を書く前に読めるようにしよう

「書く」ことは「読む」よりも難易度の高い取り組みです。1度に両方をマスターしようと思うと時間もかかります。時間をかけて1文字ずつやっているうちに、初めに覚えた漢字を忘れてしまったりもします。

ですので「書けるようになること」を目指す前に、漢字で表されるその言葉を知り、「読めるようになること」を優先させるといいでしょう。
「読む」と「書く」を分けて習得して「知っている漢字」を増やし、漢字に慣れ親しむ「読む」活動をした後の方が、「書く」活動もスムーズに行えます。

新しい漢字を1文字書けるようになったら、1行作文などその漢字を使ってみる活動をしてもいいですね。場面や思いに合わせて文章を考えなければいけないので、その漢字を意味的にもしっかり定着させることができます。

海外在住者は海外在住者なりのやり方を見つけていきましょう。

まとめ

確かに漢字学習は子どもたちにとって、なかなか手強い相手です。
でも言語習得の基本は、慣れること・使うことです。コツコツ取り組んでいきましょう。

漢字は数が多く、形も複雑に感じますが、よく見れば簡単なパーツの組み合わせでできているものがほとんどです。
まず、基本となる漢字の習得からはじめ、順に組み立てができるように練習していきましょう。

書き順を知っていることも漢字を組み立てる時に役立ちます。
書き順については、こちらの記事をご参考ください。

海外在住の子どもにも漢字の書き順を教えた方が良い理由

2020年5月3日
  • 漢字で書かれる言葉の意味を知ること
  • 書かずに覚えること
  • 定期的に思いだすこと

子どもが漢字学習でつまづくポイントを押さえ、上記の3つを意識しながら、できるだけ効率的に学べる学習方法を工夫していきましょう。

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